来歴
2004年 | 「夢ごこち」×「ホシアオバ」交配(中交04-5) |
2005年冬 | F1の養成 |
2005年夏 | F2集団栽培 |
2006年冬 | F3集団栽培 |
2006年夏 | F4集団栽培および個体選抜 |
2007年 | F5系統栽培および系統選抜 |
2008年 | F6系統群栽培 |
2009年 | 「N系65」の系統名で収量試験 |
2013年 | 岐阜県にて試験栽培開始 【(株)ハラキン】 |
2015年 | 品種登録の出願(2015.4.30)【出願番号第30152号】 |
2015年 | 品種登録出願の公表(2015.10.30) |
縁結び誕生"Story"
「縁結び」の最初の一歩は、2004年に「中島美雄商店」「稲育種研究所」が「夢ごこち」と「ホシアオバ」を交配をしたことから始まります。
2005年の冬に、F1の養成。
同2005年夏には、 F2集団栽培。
翌2006年冬に、 F3集団栽培。
同2006年夏に、 F4集団栽培をし、そこから個体選抜をいたしました。
翌2007年には、F5系統栽培および系統選抜をいたしました。
翌2008年に、F6系統群栽培をいたしました。
翌2009年には、「N系65」の系統名で収量試験が始まりました。
なお、2009年からは株式会社ハラキンが、「縁結び」種子の権利を購入し、株式会社ハラキンの種子開発チームによって、安定販売が可能な「多収穫米」の品種銘柄を模索し、検討を始めました。(「どんとこい」「あきだわら」などの在来銘柄を実験栽培)
そこからは、日本の各地で「多収穫品種」を探しましたが、しばらくの間、理想的な銘柄にめぐり合うことができずにいました。
「N系65」は、「多収穫品種」で、まさしく探し求めていた多収穫品種」という条件にかなう品種でした。
早速同社は「N系65」の種子を入手いたしました。
2013年からは、岐阜県下の生産者に協力を仰ぎ、「N系65」の試験栽培を開始いたしました。
2014年 からは、株式会社ハラキンの拠点のある地域を中心に、愛知・新潟・富山・福井・長野・滋賀県での試験栽培を開始し、試験栽培エリアをどんどん拡大していきました。
2015年に入ってから、株式会社ハラキンは「N系65」の育成者権を取得し、正式名を「縁結び」と命名いたしました。
「N系65」は、多収穫に加え、良食味という期待以上の評価も得ることができました。
また、「N系65」は「縁結び」という登録商標を得た事で、新ブランドとしての事業性も合わせて持つこととなったのです。
そこで、株式会社ハラキンは「縁結び」の種子販売のための新会社を設立することとなります。
同年、種子販売会社(株)アグリトレードを設立し、「縁結び」が日本の食卓に並ぶ日を目指すこととなりました。
同年、品種登録の出願(2015.4.30)【出願番号第30152号】・ 新品種「縁結び」として登録出願をいたしました。
同年、品種登録出願の公表(2015.10.30)をし、 上記、品種登録出願の公示をうけて、岐阜県産米の銘柄設定として申請をいたしました。
2016年に入りましてからは、 JA・生産者・報道関係者に向けて「縁結び」発表会を開催しました。
同年、岐阜県産米の品種銘柄に設定され、新ブランド米として「縁結び」のデビューが確定しました。
同年、 全国に向けて、「縁結び」の種子の販売が開始されました。
そして同年秋には、岐阜県下呂市の「縁結び」の生産者が米食味コンテストで続々と入賞を果たしました。
同時に食品店での一般販売も開始され、縁結びは晴れて日本の食卓に並ぶようになったのです。
品種概要
種類・品種 | 水稲うるち ・ 縁結び | |
栽培適地 | 東北南部以南 | |
用 途 | 食用 | |
早晩性 | 東北…晩 関東、東海、北陸…中 近畿、中国、四国…早~中 九州…早 | |
稈 長 | やや長 | |
草 型 | 穂重型 | |
耐倒伏性 | 強 | |
耐冷性 | 中 | |
耐病性 | いもち病 | 極強 |
縞葉枯病 | 無 | |
千粒粒 | 21.5g※ | |
収 量 | 多収 「日本晴」に比べ2割程度多収※ 平均反収12俵※ | |
玄米粒形 | 半紡鍾型 淡褐色 | |
食 味 | 程良い粘りの極良食味 | |
その他の特性 | 出穂期は「日本晴」と同時期 成熟期は「日本晴」より1週間程度遅い 葉色は普通、止葉は水平になる 穂発芽性は中程度 |
※栽培試験データの為、内容を保証するものではありません。
栽培ポイント
【目標収量:730kg】 | ||||
---|---|---|---|---|
栽植密度:60株/坪 | 1㎡穂数:360本 | 1穂籾数:110粒 | 登熟歩合:85% | 千粒重:21.5g |
【推奨肥料体系】
肥基:5~6kg-N/10a (N量全体の60%を目安)
穂肥:3~4kg-N/10a (N量全体の40%を目安)
合計:8~10kg-N/10a
・一発型を使用する場合は穂肥溶出時期の調節が困難な為、化成肥料の併用も検討する
(一発型:6~8kg-N/10a + 化成肥料:3~5kg-N/10a)
・有機栽培を行う場合は、耕起時に堆肥等の散布を検討する
1 | 播種時は発芽を揃える為にしっかりと吸水させる。 |
2 | 特性上「種子の休眠」が深い為、低温下で播種した場合に発芽不揃いが生じる場合がある。 浸水温10~15℃ 積算温度120℃以上 浸種期間プラス1日 を目安にする。 |
3 | 苗を徒長させないように温度管理する。 苗が徒長すると初期分けつが出にくくなり、茎数の確保が難しくなる。 |
4 | 分けつ数が、やや少ないので栽植密度を密にして茎数(穂数)を確保する。 栽植密度:60株/坪(18株/㎡) 5本植を目安にする。 |
5 | 活着後は浅水管理にして水温を高く保ち、初期分けつを促進させる。 |
6 | いもち病の耐病性は有しているが、病害虫の基本防除は実施する。 |
7 | 耐倒伏性に優れており多肥施用が有効である。 しかし紋枯病のリスクがあるので、薬剤防除も検討する。 |
8 | 茎数確保後は中干しを行い、後半の稲の活力を高めて籾数を確保する。 1穂籾数は110粒とし、㎡当りの籾数を40千粒とする。 |
9 | 出穂期は「日本晴」と同時期、成熟期は「日本晴」より1週間程度遅い。 |
10 | 粒着はやや密に着くが、粒の大きさは普通である。 |
11 | 間断潅水を行い、登熟環境を良くする。 穂長が長く登熟がややばらつく為、早刈りは避け登熟歩合85%を目指す。 |
12 | 穂発芽性は中程度であるが、倒伏等が無ければ問題はない。 |
研究所における試験栽培データ
(1)比較栽培 2013年(平成25年)
移植時期 | 5月中旬移植 4本植 | 6月中旬移植 4本植 | ||
施肥量 | 基肥:5kg-N/10a穂肥:2kg-N/10a | 基肥:5kg-N/10a穂肥:3kg-N/10a | ||
品種名 | 縁結び | 日本晴 | 縁結び | 日本晴 |
出穂期 | 8月6日 | 8月7日 | 8月20日 | 8月20日 |
成熟期 | 9月26日 | 9月18日 | 10月7日 | 10月4日 |
稈長(cm) | 89.7 | 77.3 | 87.5 | 76.2 |
穂長(cm) | 19.9 | 18.7 | 20.2 | 19.9 |
穂数(本/㎡) | 371 | 404 | 340 | 348 |
1穂籾数(粒) | 93.1 | 59.5 | 97.4 | 68.0 |
㎡当籾数(百粒) | 346 | 241 | 332 | 237 |
稈の細太 | ― | ― | やや太 | 中 |
稈の剛柔 | ― | ― | やや剛 | 中 |
粒着密度 | ― | ― | やや密 | やや疎 |
芒の多少・長短 | ― | ― | 無 | 極少・極短 |
耐倒伏性 | 強 | ― | やや強 | やや強 |
玄米重量(kg/a) | 61.2 | 45.3 | 60.7 | 45.6 |
比較比率(%) | 135 | 100 | 133 | 100 |
千粒重(g) | 21.4 | 22.0 | 22.5 | 22.8 |
アミロース含量(%) | 16.7 | 16.6 | 18.2 | 18.1 |
タンパク質含量(%) | 5.8 | 6.7 | 5.8 | 6.9 |
食味推定値 | 75 | 68 | 75 | 69 |
葉いもち抵抗性 | 極強 | 中 | ― | ― |
穂発芽性 | 中 | 中 | ― | ― |
調査圃場 埼玉県久喜市菖蒲町 アミロース含量、タンパク質含量、食味推定値はクボタ社製食味計による分析結果 良質粒歩合は静岡製機社品質判定機による分析結果 |
(2)収量比較データ 2011年(平成23年)~2013年(平成25年)/kg/10a
縁結び | 日本晴 | 対比率 | |
2011年(平成23年) | 558 | 470 | 118% |
2012年(平成24年) | 572 | 446 | 128% |
2013年(平成25年) | 606 | 456 | 132% |
平 均 | 579 | 457 | 126% |
調査圃場:埼玉県久喜市菖蒲町
現地栽培試験データ(栽培エリアは表内に表記)
(3)現地栽培試験データ 2014年(平成26年)
作付場所 | 岐阜県瑞浪市(中山間地) | 岐阜県養老町(平地) |
作付面積 | 約11a 種籾量4kg | 約20a (種籾量8kg) |
施肥量 | エムコート622 (一発肥)40kg/10a 当地区のコシヒカリの基準施肥量 33kg |
元肥 化成肥料30kg/10a 追肥 NK化成20kg/10a + 5kg |
田植え | 6月10日(当地区のコシヒカリの標準田植日は5月10日頃) | 5月20日(当地区はハツシモがメインの為、5月下旬の田植えが主流) |
出穂期 | 8月15日 | 8月3日 |
耐病性 | 周りのコシヒカリには葉いもち病が見られたが、N系65に関してはほとんど見られなかった | 周りのコシヒカリには葉いもち病が見られたが、N系65に関してはほとんど見られなかった |
粒着 | 粒着は密に着き、粒の大きさもやや大きい | 粒着は密に着き、粒の大きさもやや大きい |
刈取り | 10月15日 台風の影響があり1週間遅れでの刈取り |
9月20日 天候(雨)の都合、3日程早めに刈り取りを行った。 |
藁の太さ | 太くしっかりしている為、倒伏しなかった | 太くしっかりしている為、倒伏しなかった |
収穫量 | 玄米量/12俵 ・・・ 720kg (10a当たり654kg換算) くず米/約60kg (米選下及び色選下含む) 瑞浪市の平均反収 ・・・ 平成25年度 524kg |
玄米量/21.5俵 ・・・ 1,290kg (10a当たり645kg換算) くず米/約90kg (米選下及び色選下含む) 養老町の平均反収 ・・・ 平成25年度 425kg |
食味 | 程よい粘り感もあり、おいしかった | 程よい粘り感もあり、おいしかった |
感想 | 8月の天候が悪く、いもち病が心配されたが病紋はほとんど見られなかった。 箱剤処理と本田オリゼメート散布のみで対応できた。 穂いもちに関しては、まったく見られなかった。 8月以降、3回の台風に見舞われたが藁が太くしっかりしていた為、ほとんど倒伏しなかった。 収量が多収なことが最大の魅力。(過去最高の収量を記録) |
8月の天候が悪く、いもち病が心配されたが病紋はほとんど見られなかった。 穂いもちに関しては、まったく見られなかった。 藁が太くしっかりしていた為、ほとんど倒伏しなかった。 収穫後の稲藁の量も多かった。 |
(4)現地栽培試験データ 2015年(平成27年)
産地 | 岐阜瑞浪 圃場① |
岐阜瑞浪 圃場② |
岐阜養老 圃場① |
岐阜養老 圃場② |
愛知※ | 福井※ | 富山※ | 新潟※ | 長野※ |
稈長 (cm) | 85.9 | 92.2 | 89.9 | 86.7 | 89.8 | 92.3 | 81.3 | 90.4 | 90.0 |
穂長 (cm) | 19.5 | 20.3 | 20.4 | 22.2 | 21.7 | 19.8 | 19.6 | 19.9 | 19.1 |
1株穂数 (本/株) | 16.7 | 19.2 | 17.4 | 15.6 | 23.8 | 19.7 | 16.1 | 19.4 | 26.8 |
1株籾数 (粒/穂) | 95.8 | 110.0 | 109.3 | 123.2 | 109.1 | 91.4 | 90.1 | 100.5 | - |
登熟歩合 (%) | 84.3 | 79.7 | 65.6 | 59.9 | 60.1 | 71.8 | 81.1 | 61.5 | - |
千粒重 (g) | 24.4 | 23.9 | 22.1 | 22.5 | 21.9 | 20.8 | 23.7 | 22.4 | - |
株数 (株/㎡) | 18.8 | 15.4 | 16.5 | 18.0 | 15.0 | 17.8 | 17.2 | 18.2 | 14.3 |
穂数 (本/㎡) | 313 | 295 | 286 | 280 | 358 | 351 | 278 | 352 | 384 |
籾数 (100粒/㎡) | 301 | 325 | 314 | 346 | 389 | 321 | 249 | 355 | - |
収量 (kg/10a) | 619 | 619 | 455 | 466 | 512 | 477 | 480 | 489 | - |
- ※愛知県圃場については種子の生産を目的として作付した。
- ※福井県、新潟県圃場については長雨の影響で、登熟が進まなかった。さらに作業の都合で早刈り傾向にあった為、登熟歩合が85%に届かなかった。
- ※富山県圃場についてはコシヒカリ並みの施肥量にて栽培した為、穂数確保が出来なかった。
- ※長野県圃場については出穂期~登熟早期の落水(水不足)により収量調査が出来なかった。
2015年(平成27年)は全国的に8月上旬まで好天に恵まれ、概ね良好な初期生育が確保されたと思われるが、8月中旬以降に台風や大雨の影響で登熟期後半は天候に恵まれなかった。北日本・東日本は豊作傾向にあったが、関東以西は不作気味となった。最終的には、全国作況指数は100となったが「縁結び」の試験栽培を行った6県の作況指数は97~103のやや不作となった。
「縁結び」は悪天候で作業都合により早刈りする傾向にあり、登熟歩合が極端に低い圃場が多く見られたが、岐阜県圃場においては他品種に比べ同等もしくは1俵以上多く収穫する事が出来た。
食味値
玄米測定:静岡製機GS-2000
炊飯測定:サタケ炊飯食味分析STA1A にて測定
岐阜瑞浪 | 岐阜養老 | 福井 | 富山 | 新潟 | ||
玄米 | 水分 | 15.1% | 13.4% | 14.7% | 14.7% | 14.7% |
タンパク質 | 7.2% | 7.9% | 6.6% | 6.3% | 6.9% | |
アミロース | 20.6% | 20.9% | 21.5% | 20.6% | 20.8% | |
評価点 | 73点 | 70点 | 78点 | 81点 | 76点 | |
炊飯 | 外観 | 9.3 | 9.1 | 9.8 | 9.8 | 9.2 |
硬さ | 4.9 | 5.0 | 3.9 | 4.0 | 5.0 | |
粘り | 9.7 | 9.3 | 9.8 | 9.8 | 9.6 | |
バランス | 9.5 | 9.3 | 9.8 | 9.8 | 9.4 | |
食味値 | 90点 | 88点 | 96点 | 97点 | 89点 |